朝起きて顔を洗いに洗面所へと向かう。
いつもと同じ朝。
蛇口を捻り、水を溜めようと手を伸ばすと、視界に入る見慣れない色。
『手首』
それは昨晩のこと。
お呼びがかかり、窓枠に足を掛けた。
《どこへ行く?》
背中にかかる声。
直接脳に響くような声は、部屋を出ようとした男の背にかけられた。
「少し出てくるよ。心配しないでくれ」
朝には戻ると、呼び止める声を聞かず窓から飛び出した。
やって来たのは、泊まっている宿から少し離れた裏路地。
奥へ奥へと歩いていく。
奥に進むにつれて、ちらほらといた人達も見えなくなっていく。
それでも奥へと進む。
すると、気配を感じた。動く気配はない。
しかし、確実に人の気配。
自然と歩調が速くなる。
角を曲がると壁が見えた。行き止まりだ。少し視線をずらす。
それは行き止まりの壁ではなく、建物に凭れて立っていた。
「待たせてしまったかな?」
立っていた人物に歩み寄る。
金色の髪を後ろで軽く結ってあり、額には緑の紋様。
「会いたかったぞ、ウッドロウ」
伸ばされた腕に抱き締められる。
強く、けれども優しい。
心地よい温もりに応えるように、背に腕を回す。
「すまなかったな」
男は口を開いた。
何のことだ、と問う。
「いきなり、しかもこんな時間に『会いたい』と」
「気にすることはない」
嬉しかった、と顔を上げた。
「急に、会いたくなってな」
近付いてくる唇をそっと受け入れる。
舌を絡め、息が苦しくなるまで長く深く。
溢れる吐息は、互いに甘い痺れを与えた。
唇が離れ息を整える間もなく体をまさぐり始めたのは男の手。
「、今日はやけに…性急じゃないか…ぁ」
「私にもわからん」
「…ここで、するのか?」
「嫌か?」
「……シャワーがない、っ!」
「宿に戻ってからでは、だめなのか?」
「見つかると…面倒…だ。土埃だけならまだ、いいが…」
「そうか。なら、服は汚さないよう気をつけよう」
「服だけか、頼む…ぁ、ん」
話している間も行為は続いていた。
服は捲られ、ベルトを引き抜いたズボンは下着と共に落とされ、かろうじて足に引っ掛かっていた。
しかし、男は突然動きを止めた。
物を言いたげな瞳がこちらを見る。
「…どうし」
「ウッドロウ、離さないでくれ」
「え?」
引き抜かれたベルトを両手首に巻かれる。
「今、この時だけでも離れたくない」
らしくない弱々しい言葉だった。
だが、らしくないからこそ、何だか微笑ましくて。
腕で輪を作り、頭から通してぎゅっと服を掴んだ(汚れても構わないらしい。)
「仕方がないな」
微笑んで答えれば、ぱっと顔を輝かせ、再度唇を寄せた。
「……はっ、あ…」
「ウッドロ、ウ」
「な、に……」
「愛している」
「…知ってる、ん…」
「言って…くれないのか?」
「言って欲しい?」
「当然だ」
「そうか……」
くすりと不敵に笑い、腕に力を入れて体を少し高くする。
その間も行為が止められることはない。
耳元に口を寄せ、ゆっくりと息を吐き出した。
「私も―――
出てきたときと同じ様に窓枠に足を掛け、部屋へ戻った。
そのまま浴室ヘ向う。
《随分と遅かったな》
心配性なパートナーだと内心で苦笑する。
「ぼんやりと考え事をしていたら遅くなってしまった」
早く洗い流さねば乾いて取りにくくなる、否、かえって取りやすいだろうか?
と頭の片隅で考えてみた。
「まあ、どっちでもいいか」
《何がだ?》
「…明日の朝食の話だ」
うっかり零れた言葉に焦ることなく、返事を返す。
嘘をつく事だって彼のためなら構わない。相当入れ込んでいるようだ。
「シャワーを浴びてもう寝よう」
《また入るのか?》
「歩いてたら植木に突っ込んでしまってね、すっきりしないんだ」
朝になればまた敵同士だ。
頭からシャワーの湯を被りながら思う。
二人だけの時間が永遠に続けばいいのに、と叶いもしない願いを胸に抱いて。
「ウッドロウさーん!朝ごはん食べに行きませんかー!」
珍しく時間通りに起きた(起こされた?)スタンに呼ばれ、今行くよと答えた。
指先でそっと触れてみる。
解かれたベルトの下、赤くなった手首を見て、痛くないか、と心配そうに触れられた時のように。
大丈夫、痛くない。
「……ミクトラン」
―――愛してるよ。
唇は弧を描き、柔く手首に口付けた。
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久々にミクウドです
お呼びがかかったってのは、まあ、
お手紙が置いてあったってことでひとつお願いします…
嘘は付かないって言ってるウッドロウですが、
ミクトランの為だったら付いちゃう!ってぐらい好きなんですよ(この話では←)