無駄に長い
05キスをねだる
「ウッドロウ」
執務中ふと名前を呼ばれ、声の方へ目を向ければ、窓の外に見覚えのある人物。
「さ、寒い……」
そこには天上王ことミクトランがいた。
ファンダリアは年中雪に覆われ気温も低い。
夏とて例外ではなく、雪がちらつく日もある。
そんな中、ミクトランは鼻の頭や耳を真っ赤にして外にいた。
窓を開け、部屋へ入れてやる。
かなり雪にまみれていた。
「こんなに雪だらけで…風邪でも引いたらどうする?」
雪を払い落としながら聞く。
「…別に、引いてもいい」
「何馬鹿な事を…」
「風邪を引けば、ウッドロウが看てくれるのだろう?」
何故か自信満々に言われ言葉に詰まる。
心なしか顔が熱い気がするのは気のせいだ、きっと。
ミクトランの問いには答えず、机に戻ろうとすると腕を捕まれる。
「…何を……」
する、と言いかけたが、いきなり目の前に現れたミクトランに驚き、出かけた声が戻っていった。
「私が此処へ来たのは理由がある」
未だ驚いている私に構わず続ける。
「ウッドロウに会いたかったからだ」
どきりと胸が高鳴る。
どこの少女だ、私は……。
また顔が熱い。
もう気のせいではすまない。
「ウッドロウ…」
徐々にミクトランの顔が近づいてくる。
目が会い、私は目を閉じた。
こんこん
後少しで重なるというときドアをノックする音がした。
はっと我にかえりミクトランを突き飛ばす。
油断していたようで簡単に飛んだ。
それと同時にドアが開かれる。
入ってきたのは意外にもダーゼンだった。
「な、何用だ、ダーゼン。返事も無しに入るなど」
「申し訳ありません陛下。急いでおりまして…。予算案をお持ちしました」
「ああ、ご苦労。急いでいるのら早く行きなさい」
「すみませぬ…それでは失礼致します。あ、ミクトラン殿、ごゆっくり」
「ふう…。……?ミクトラン??」
そういえばさっきから動かない。
突き飛ばしてから。
「!!す、すまないミクトラン!さっきは咄嗟に…!」
反応が返ってこない、そっぽを向いていることから…拗ねてる。
わかりやすいな、なんて苦笑していると、いじけた声で言った。
「私は怒っているのだぞ!笑うな!」
「怒ってると言うより、拗ねてるんじゃないのか?」
「…そうともとれるな」
と、うんうん唸っている。
拗ねてるのに、同意するなんて、とまた苦笑。
唸っていたミクトランは何かを思い出したかのように顔を上げた。
悪巧みを思い付いたような表情だった。
「いいか、私は怒っているのだぞ?だが、一つだけ私の機嫌を直す方法がある」
聞いてくれと言わんばかりだ。
仕方ないので聞いてみよう。なんとなく想像はつくが。
「ほぉ、それはどんな方法だい?」
「ふふん!それはな…」
勿体ぶるように間を空ける。
少し顔がニヤついてきてるぞ。
「ウッドロウがキスすることだ!」
ああ、やっぱり。
予想は的中。
してあげてもいいのだが、ここはやはり試練を与えよう。
「いいだろう。シてあげるよ」
「っ!そ、そんな風に言うな」
「何故?」
「ゾクゾクする」
「……(無視)ただし条件がある」
「私の機嫌を直す方法だぞ!?」
「いらないならいいのだけど…」
「いらなくない!むしろ欲しい!…わかった。条件は?」
「待つだけだ」
「何を?」
「仕事が終わるのを」
「それだけ?」
「それだけ」
待つだけと知ると途端に笑いだした。
急にびっくりするじゃないか…
「待つだけとはな。簡単ではないか!待つことには慣れてるぞ!!」
ああ、私達がちっとも外殻へ行かないからか。
自慢気に言われても困るのだが…
とりあえず仕事を始めることにした。
始めて数分ミクトランもまだ余裕のようだ。
時折「かまえ〜」とか「ちゅーしろ〜」とか聞こえてくる。
書類もさして進んでおらず、まだかかりそうだ。
一時間が経過した。
飽きがきているようだ。
そろそろ限界か…?
ミクトランは立ち上がり歩み寄って私の前へ立った。
「まだ終わってないが?」
「もう待てん。待つことには慣れてるが、欲しいものが目の前にあるのとないのでは違う」
そう言って顔を近づけてくるが、手で止める。力を入れて。
「駄目だ。障害がある方が燃えるだろう?」
「と、時と場合に、よる。今回は待つ時間が長すぎる」
「そうか?…私は燃えているよ。
早く君の腕に抱かれ、君の唇に触れ、君に………愛されたい…」
俯き気味で上目使い。
熱のこもった吐息混じりの声で、だんだん早く話し、
愛されたいの前に間を空けるのがポイントだ。
まあ、顔を鷲掴みにしている時点でムードも何もないのだが。
ミクトランは戸惑ってる。
私が誘うようなことを言っているから。
こんなこと滅多に言わないからな。
さっき言ったことをしっかりと理解したらしい、ミクトランは「楽しみにしていろ」と言い残し戻って行った。
扱いやすい…苦笑
とりあえず続きだ。
待たせるためとはいえ、ミクトランに火を付けたのは私だからな。
早くしなければ。
とは思ったものの、予算案は手早く済ませない。
サインするだけの書類とは勝手が違う。
それこそ国を左右するもの。
手強い予算案が終わり今日の分は終わった。
時計を見れば既に二時間経過していた。
これではさしものミクトランでも耐えられないだろうとふんで、隣室へ向かった。
部屋を覗いてみれば、案の定待ちくたびれて眠ってしまったミクトランがいる。
周りには本が散乱していたが、ミクトランの性格からして失敗だろう。
「物を食べるなり、動くなりすればよかったのに」
あまりにも気持ち良さそうに眠っているので、急いだ自分がちょっと馬鹿らしく思えたが、まあいいか。
一応待っていたしな。
私は眠るミクトランを起こさないようにそっと唇を寄せた。
「ほら、起きてくれミクトラン」
「…ん、」
揺り起こしたが大分寝ぼけている。
「あー…あ?あ、あぁっ!」
「どうし…っ」
言い切る前に肩を掴まれ前後に揺らされる。
「あぁ…あ…」
「ちょ、ちょっと、お…落ち着いてくれ」
「………そうだな。すまん」
手を離し、申し訳なさそうに謝る。
落ち着いたようなので訳を聞いてみた。
すると
「キスは…?してくれるのか?」
ああ、そのことか。残念だが…
「しない」
「ぬぁあああぁぁ!!!待ってただろ?!ちゃんと!」
「寝てたじゃないか」
「それは……まあ、そうだが、待ってたにカウントされるだろ!」
「私は……起きてて迎えて欲しかった…!」
くるりとミクトランに背を向ける。
悲しんでいる素振りだが、もちろん嘘だ。
待ちきれずに寝てしまいそうな予感はしてたので、さして気にしてはいない。
が、ミクトランには効果覿面だったようだ。
「そんなに寂しい思いをさせてしまったとは…すまなかった」
「っ……ぁ、ゃ」
急に後ろから抱きしめられ、耳元で喋られる。
耳は…ウィークポイントだ…
「だから今からたっぷり愛してやるから…」
ウッドロウからキスして欲しい…
耳元で囁かれ、体が反応してしまう。
でも、言われたって私からはしてやらない。
だって私はもうミクトランにしてあげたのだから。
それに――
「…私はミクトランからシて欲しい…」
振り返り顔を仰げば、僅かに見開かれた目が見えた。
しかしそれもすぐのことで、優しく笑いかけるように目を細め、
「愛してる」
そう呟いてキスをしてくれた。
私からキスをしたことを君はきっと気づかない。
私だけが知っていればそれでいいんだ。
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何日もかけて書いたせいで何がしたかったか忘れてぐちゃぐちゃです
とりあえずミクトランがあほ