「ルーティ、フィリア。僕に何の用だ」
ハイデルベルグに遊び来たと言う二人に呼び出され、今客間にいる。
ウッドロウは政務中で不在だ。
「私とても面白いこと思いついたんです」
「面白い事だと?」
フィリアの面白い事は正直当てにならない。というかはずれだ。
今までろくな事がなかったのを覚えている。
「いやいや、ほんとに面白いから!」
ルーティの顔。普段通りに笑っているつもりだろうが、出来ていない。
なんだかにやにやしてる。こういうときは何かを企んでいるときだ。
迂闊に答えない方がいいのはわかりきったことなので、
断るとぴしゃりと言い放ち部屋を出ようと立ち上がる。
だが、驚いた事に物凄い速さで目の前に現れたフィリアに行く手を阻まれる。
「退け、フィリア。僕は戻る」
そろそろウッドロウの政務が終わる時間だ。
「戻るのは構いませんわ。けれども」
何かを目の前にかざされる。
「これをかけてからですわ」
「っ?!!」
と、何かスプレーのような物が吹きかけられた。
変に甘ったるい香りがして気持ち悪い。
途端に来るのは眩暈と脱力感。
「何を…かけ、た……?」
「ちょっとした薬ですわ。体に害はありません」
なのになんでこんなに変な感覚になる!?
視界が霞かかったみたいで、体中が熱くなって、
ウッドロウのことしか頭に浮かんでこない。
「本能に忠実になれる薬です。楽しんでくださいね」
意識を飛ばす直前に見えたのは、心底楽しそうに笑うフィリアだった。
「……う…」
目を開ければ見慣れた天井。
目線を下げれば、頭に浮かんでやまなかった人。
「ああ、目が覚めたかい?」
見える範囲に視線を巡らすがあの二人はいない。
「ルーティ君とフィリア君は帰ったよ。まだ来たばかりだったのに。 どんなことを話したんだい?」
二人と何を話しただろうか…。
「でも、驚いたんだよ?客間へ行ってみたら、二人はもう帰るって言うし、リオンは倒れてるし。急いでベッドに運んだのだよ」
思い出せない。というか考えられない。
「そうだ、具合はどうだい?熱でもあるのかな?」
目の前のこの男の事以外。
「リオン?」
額に添える為伸ばされた手首を掴み引き寄せれば、バランスを崩し、いとも容易く腕の中におさまる。
背の割りに細い体は力をいれれば折れてしまいそうだ。
「リ、リオン…急に…どうしたんだい?」
抱きしめられているということに照れているのかうっすらと頬を紅潮させ俯き気味に話す様は、引き摺り出された感情に火をつけるのに十分だった。
体を反転し組み敷く。羞恥に染まった顔が驚きに変わったのは同時だった。
「リ……!」
今、己の顔は歪んでいるだろう。狂気の笑みを湛えて。
あまりにも驚愕過ぎて一言も発さず、微かに震えている体。
和らげてやろうと頬に手を添えれば、びくりと肩が揺れた。
歪んだままの笑みを形作ったまま告げた。
逃げろウッドロウ
「…逃げろ…ってどういう、こと…?」
「…そのままの意味だ、早く……」
本能に押しつぶされそうになりながら必死に声を絞り出す。
頼むから、早く、逃げてくれ…!
「このままでは…ウッドロウを…」
「え?」
零れた声にウッドロウの動きが止まる。
「っ?!」
「時間切れだ」
逃げようとしたウッドロウの腕を掴み頭上で固定する。
「だから早く逃げろと言ったのにな」
「どういうことだ!」
「お前を壊したいからさ」
ウッドロウの口を塞ぐ。
何かを話そうとしたが言葉ごと飲み込むように深く。
呼吸すら奪うように。
「、ん……ふ…はな、せ!」
「断る」
息継ぎをして一旦離れてはまた塞ぐ。
角度を変えては深く長く。
ようやく解放した頃には、ウッドロウは既に息を上げ、ぐったりとしていた。
「くく…もう、感じてるのか?」
「ぅ、うるさい……」
これで終わりだと思うな。まだまだこれからが楽しいのだから。
「お前は誰だ!」
「何を言い出すのかと思えば…僕がリオンだ」
「お前のような者がリオンな訳が無い!」
「試してみるか?」
「なに……ひゃっ?!」
ウッドロウの手を片手でまとめ、自由になった手をズボンの中に滑らせる。
中心を握れば、驚きを含めた上ずった声が零れた。
恥ずかしかったのか顔を背け口を噤んでいる。
「僕とお前の仲だ。いまさら抑えることも無いだろう」
「私は、お前なんか…知らない!」
「あー……今の言葉には少々、傷ついたぞ」
「ぃ、っあ…!」
握っていたウッドロウ自身を強く握る。
痛みを感じてか悲鳴を漏らす。
が、痛みだけを感じていないというのは声でわかる。
間違いなくウッドロウは痛みだけでなく快感も感じている。
「感じたか?」
「そんなこと…」
「あるだろう?艶のある声が出たじゃないか」
「ち、ちがっ…」
認めようとしないウッドロウを更に追い詰めるべく、上下に擦る。
するとウッドロウはおもしろいぐらいに声を上げる。
口を手で塞ぎたいのだろう、必死に手を暴れさせる。
ちなみに足は既に快感に打ち負けているらしく特に抵抗は無い。
「や、はな…せ……ふ…ぅ」
「一国の王ともあろう者が随分と可愛がられてるようじゃないか」
「……ん…あ……はなれ、ろ……」
「これだけじゃ足りないんだろ?」
「い、今すぐに…やめ…ろ…」
「そう意地を張るな。素直になったらどうだ?」
体は正直だぞ?
手の中で主張するウッドロウを指で弾いてやれば、
先端からぬめり気を帯びた液が更に溢れ、手を汚していく。
切なげな悲鳴を上げて、瞳には生理的な涙が浮かぶ。
「っは、ぁ……くっ」
「そんな目で睨まれたって怖くはない。むしろ誘ってるのか?」
伝う先走りを指で掬い後ろの孔へ添える。
何をするのかわかったウッドロウが止めようと口を開いこうとしたとき、
一気に挿し入れた。
「ぐっ、あ……!」
異物感にぎゅうぎゅうと締め付けつつも蠢く中はまるで誘っているかのよう。
「やはり狭いな。もっと力を抜け。指が千切られそうだ」
「そんな…こと……あ、ぃ、言われ…ても…」
息を整えようとゆっくりと肩を上下させる。
だがその間も指は止まることなく中を蹂躙していく。
「少し、緩んできたか」
だがその緩んだ隙をねらい更に指を追加する。
二本の指をばらばらに動かしあちらこちらと這い回る。
そのとき指がある一点を掠めた。
ウッドロウの体がびくりとはねる。
「っひ、あ…!」
「ああ、イイところに当ったのか」
流れ、淫らな液は孔まで伝い落ち、それが手伝って指の動きがスムーズになる。
指を三本に追加しさらに押し広げていく。
「そろそろいいか」
指を引き抜けば、喪失感から孔はひくついていた。
「こんなに欲しがって…。やはり体は素直だな」
「だ、黙れ……」
「まあ、今から嫌でも素直になるさ」
ベルトを外し、モノを取り出す。
ウッドロウの痴態に興奮してか、既に反り起っていた。
それを孔へとぴたりと宛がうと体が揺れた。
「あ、ま、待ってくれ…!」
「断る」
「ぐ、あ、っああぁぁ……!!」
徐々に挿入することはせず、最奥まで一気に突き上げる。
扱かれたのと指で弄られたことで限界を訴え始めていたウッドロウは、
奥を突かれたことによりあえなく達してしまった。
「っは、あ……ん…」
「ああ、イッてしまったか。だが、これで少しは楽になるだろう」
そう言うや、奥まで挿したモノを入り口まで引き抜き、
今度はゆっくりと前後に動く。
ほぐしたとはいえきつい中は、ウッドロウが達したことにより、さらに絡み付くように蠢いた。
「くく、淫乱だな」
「ぁ、あ…ちが……」
達したばかりのウッドロウだが再び始まった律動にまた熱を昂らせていく。
ウッドロウの理性は崩壊寸前だった。
目が虚ろになり始め、口の端をだらだらと唾液が伝う。
抵抗する気力がないと見て拘束していた手を外し、ウッドロウの頬に手を添えた。
「あ、ん……」
「イイ顔になってきたじゃないか」
顔を近づけ喰らいつくようにキスをする。
その間も体を止める事は無く、突き続ける。
息継ぎの間に零れるウッドロウの熱の籠もった息に
リオン自身も刺激されていく。
「お前の中は最高だな…っ、もう、イってしまいそうだ」
「…ん、う」
「ウッドロウはどうだ」
イってしまいそうか?
耳元で囁けば肩がゆれる。
その反応だけで十分だと言わんばかりに、リオンは腰の動きを激しくさせる。
ウッドロウの理性は囁いたときに快楽に溶けてしまったようで、
更なる快楽を求め、リオンの動きにあわせ腰を揺らす。
「っあ、あぁ…も……だ、めだ」
「ああ、僕も、イきそうだ…!」
リオンは奥へ奥へと腰を叩きつける。
ウッドロウは誘うように腰を揺らす。
「ぁ、あ、あっ、う…ぁああっ――!!」
「ぅ、っ!」
ウッドロウが絶頂に達し熱を吐き出した。
達したことにより結合部は締め付けられ、
引きずられるようにリオンもウッドロウの中へと熱を注ぎ込んだ。
「っあ…は…は、ぅ……」
「は…っは…」
荒く熱の籠もった息づかいだけが響く。
リオンがふとウッドロウを見やれば、瞼が降りかけていた。
それを見たリオンはウッドロウの右頬を引っ叩いた。
ぱしんと高らかに音が響いた。
しかし、呻いたウッドロウだが意識を覚醒する事は無くそのまま目を閉じた。
「っち…飛ばしたか…」
憎々しげに呟く。
まだまだこれからだったのに。
とでもいいたげな顔だった。
仕方なくウッドロウから出ようと動こうとしたとき、
慌しい足音が聞こえ、無遠慮にドアが開かれた。
立っていたのは、金髪の長身の男と銀髪の男だった。
「ウッドロウ!」
「坊ちゃん!」
イクティノスはウッドロウに、シャルティエはリオンの元へと駆け寄った。
「邪魔をするな出て行け!」
「出て行くのはとりあえずお前が先だ」
「何だと?――っ離せ!」
「イクティノス、早く!!」
リオンの背後からシャルティエが羽交い絞めにする。
その間にイクティノスはウッドロウをリオンの下から引き摺り出した。
異物感がなくなったのが無意識下でもわかったのか身じろいだ。
「おい、もう離せ」
「まだだめです!」
「これをかけてからだ」
「っ何だこれは?……う」
スプレーをかければリオンは眠った。
イクティノスとシャルティエはそれぞれマスターをシーツでくるむと浴槽へ向った。
シャワーであらかた流し終えると二人をベッドへ運んだ。
「はー、重かった」
「お前達は背格好が似てるからな」
「いいな、イクティノスは。背も高いし、力もあるし」
「なら、もっと鍛えるんだな」
「鍛えるなんて僕のがらじゃないしー」
「確かに」
「あ、そこ納得するんだ」
「悪かったな」
話がひと段落すると空気が沈む。
おちゃらけた話をして気を紛らわしているだけで、心持は暗い。
イクティノスとシャルティエが心配している事。
それは目が覚めたときの、ウッドロウとリオンが顔を合わせたときの反応だ。
「二人とも前みたいに笑ってくれるよね?」
「…きっとうっとうしいくらいにいちゃついてくれるさ」
「そうだよね。この二人なら大丈夫だよね」
「ああ。おそらくな」
「おそらくとか言わないでよー!」
「う……?」
先に目を覚ましたのは
「坊ちゃん!」
リオンだった。
しかし、さっと顔色が悪くなる。
リオンは己がウッドロウに強いた行為を覚えていた。
「…僕は……なんてことを……」
「坊ちゃん……」
「ウッドロウは…」
「まだ眠っている」
「……そうか」
「イクティノスが僕にかけたのは何だ?かけられたものは?」
「それはウッドロウが目を覚ましてから話す。二度も話すのは面倒だからな」
ぶっきらぼうに話すが視線は常にウッドロに向いていた。
ウッドロウの眠るベッドの淵に腰掛け、見つめていた。
リオンはその光景をただ静かに見ていた。
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